私が一貫して患者様たちに お伝えしているのは「自分で治せる体づくり」の大切さです。これは、薬や病院を否定するという意味ではありません。必要な場面で医療を頼りつつ、ふだんの生活で“自己治癒力(自然治癒力)”を最大限に発揮できる体の状態を育てていく——その主導権を自分に取り戻す、ということです。カギは難しい特別な事ではなく、毎日くり返せる基本の徹底にあります。今日はその要(かなめ)を「食事」「姿勢」「少しの運動」という三つの柱に分けてお話しします。
まず一つ目は「食事の影響」。私たちの体は、食事したででき上がっています。免疫、代謝の巡り、傷んだ組織の修復、腸内環境のバランス——どれも材料が不足すれば機能は落ちます。だから“これだけ食べれば正解”という極端なやり方ではなく、タンパク質・良質な脂質・彩り豊かな野菜や海藻・発酵食品・適量の穀類を、あなたの体調と活動量に合わせて“無理なく続けられる配分”で整えることが肝心です。おすすめは「快・不快メモ」。食後1~2時間の体と気分をひと言で記録し、あなたの体がよく反応する食べ方(朝は軽く、昼にタンパク質を厚く、夜は消化にやさしく等)を見つけていきましょう。水分はこまめに、砂糖・アルコールは“楽しむ日”と“控える日”を分け、腸がよく動くリズムを作ることが、腰や背中のこわばりの軽減にもつながります。人の体はそれぞれです。これと決まった事はないので是非自分でチェックしていきましょう。
二つ目は「姿勢の影響」。姿勢は意志の問題ではなく“環境と習慣の産物”です。デスクの高さ、椅子の高さ、スマホをのぞき込む角度、家に入るときの靴の脱ぎ方やカバンの置き方——無意識の小さな反復が、背骨と骨盤の位置に少しずつ負荷かけ、筋膜のねじれや関節の詰まりを生みます。まずは“気づくこと”が矯正の第一歩。1日3回、時計のアラームで「姿勢チェック60秒」を。耳・肩・骨盤・くるぶしができるだけ一直線上に乗っているか。奥歯を噛みしめていないかを確認します。座るときは坐骨で座る・背もたれに体重を預けすぎない・モニターは目線の高さ、これだけでも首と腰の負担はぐっと下がります。“良い姿勢を頑張る”より“悪い姿勢の時間を減らす”が合言葉です。
三つ目は「少しの運動」。違和感や重だるさを感じたときこそ、体が「循環を上げてほしい」とサインを出しているときです。激しい運動は要りません。30~90秒の小さな動きを、こまめにはさみましょう。たとえば(1)肩甲骨を寄せて胸を開く10回(呼吸を吐きながら)(2)骨盤を前後にゆらす座面ペルビックティルト10回(3)足首のポンピング20回でふくらはぎを働かせる。仕上げに“4-2-6呼吸”(4秒吸う→2秒止める→6秒吐く)を3サイクル。血流と神経の滑走が整うと、同じ姿勢でも疲れにくくなります。ウォーキングに出られる日は、最初の5分は“遅め”、次の10分は“やや速め”、最後の5分は“クールダウン”。このだけでも十分に体は応えてくれます。
ここで一つ、よくある誤解を解いておきます。「痛いから動かさない」は、急性期を過ぎれば逆効果になることが多いのです。もちろん、強い痛み・しびれ・発熱・外傷などの異常があるときは医療機関の受診を優先してください。そのうえで、落ち着いてきたら“少し動かす・少し整える・少し休む”の三拍子で、体の自己調整力を呼び覚ましていきましょう。
当院のアプローチは、この三つの柱を“その方の生活”に合わせて現実的に落とし込むことです。施術で関節・筋膜・神経の流れを整えるだけでなく、外側(姿勢・動作)のチューニングと内側(食事・睡眠・水分)のチューニングをセットでご提案します。初回は丁寧な問診と検査で、痛みの発信源と日常のクセを一緒に確認。二回目以降は「ホームケア計画書」を共有し、週単位で“何をどれだけやるか”を具体化します。たとえば「デスク周りの2cmの調整」「夕食のタンパク質を手のひら1枚に」「寝る前の4-2-6呼吸3セット」——小さな実行を積み上げ、再発を遠ざけていきます。目指すのは“施術に通わなくても安定する体”。私たちはその伴走者であり、あなたの体が持つ力のスイッチを押すお手伝いをする存在です。
自分で治せる体づくりは、特別な才能ではなく、毎日の選択の積み重ねです。食べ方を少し整える。姿勢に一度気づく。30秒だけ動く。たったそれだけの違いが、1週間で調子に、1か月で姿勢に、3か月で体質に表れます。今日からできる小さな一歩を、一緒に始めましょう。体は必ず応えてくれます。




